アジアの伝統芸能

授業の概要と目的(何を学ぶか)
 中国には「戯曲」と総称される 300 種あまりの伝統歌劇と「曲藝」と総称される 400 種ほどの語り物がある。こうした芸能を通じて、中国庶民の文芸世界を垣間見ようというのが本講義の目的である。中国の庶民が、どのような物語に笑い、怒り、涙したのかを、彼らの一番身近にあったメディアを通じて追体験していく。

到達目標
 この授業を通じて、中国の伝統芸能の全体像とその代表的作品、演出・技法などを体系的に学び、そうした伝統文化が新たな文化の創出にどのような役割を果たすかを理解することができる。

授業の進め方と方法
 授業は、講義とリアクション・ペーパーによる質問・意見を組み合わせて行う。講義では、できるだけ多くの映像資料を使い、中国の伝統芸能とそこから生まれた音楽や映画などの世界を体感していきたい。
 課題などへのフィードバックは、授業中またはメールを通じて行う。

授業計画

月日 テーマ PPF
1 9/26 はじめに~講義の目的と内容について
中国の伝統芸能を学ぶ目的と意義について考える
ppf
2 10/3 中国の伝統芸能とは 中国の伝統芸能にはどのようなものが
あるのかを概観する
ppf
3 10 伝統芸能の美~川劇「白蛇伝」を例に
 魯迅が祖母から聞いたという杭州の雷峰塔にまつわる伝説を紹介した後、四川省の地方劇である川劇「白蛇伝」の第一幕から第二幕までを鑑賞しながら、雲牌という表現技巧を例に、「有声必歌、無動不舞」(声あれば必ず歌い、舞わざる動きなし)といわれる中国伝統演劇の特色について学ぶ
ppf
4 17 川劇「白蛇伝」の世界(一)
 川劇「白蛇伝」の第三場から第五場前半までを鑑賞しながら、中国伝統演劇の表現技法である 翎子功、船槳、臉譜、水袖功について学ぶ
ppf
5 24 川劇「白蛇伝」の世界(二)
 川劇「白蛇伝」の第五場後半から第八場までを鑑賞しながら、中国伝統演劇の表現技法である假嗓、水袖功、水旗、
毯子功を学んだ後、川劇独自の特殊技法である開慧眼、変臉について学ぶ
ppf
6 31 白蛇故事の変遷
 中国の四大民間故事の一つである「白蛇伝」の歴史的変遷について学ぶ
ppf
7 11/6 現代によみがえる伝統芸能~映画「舞台姐妹」から見た中国伝統演劇の世界
 中国の伝統演劇の役者たちはどのような暮らしをしていたのか。越劇の女優たちを描いた映画「舞台姐妹」を通じ
て、役者たちの近代への歩みを学ぶ
ppf
8 13 現代によみがえる伝統芸能~越劇から西洋音楽へ
 越劇と西洋音楽を融合させ、梁山伯と祝英台の伝説を音楽によって克明に描き出したバイオリン協奏曲「梁祝」と、その誕生の背景について学ぶ
ppf
9 20 現代によみがえる伝統芸能~映画「梁祝 Butterfly
Lovers」を例に(一)
 「梁祝」故事の映画化の歴史を学ぶとともに、バイオリン協奏曲「梁祝」をテーマ曲として、この故事に新たな解
釈を加えた映画「梁祝 Butterfly Lovers」の前半を鑑賞する
ppf
10 27 現代によみがえる伝統芸能~映画「梁祝 Butterfly
Lovers」を例に(二)
 映画「梁祝 Butterfly Lovers」の後半を鑑賞するとともに、バレエやドラマなど、この故事に取材した新たな作品
について学ぶ
ppf
11 12/4 梁祝故事の変遷
 中国の四大民間故事の一つである「梁祝故事」の歴史的変遷について学ぶ
ppf
12 11 日本の伝統芸能とアジア(一)狂言「附子」「鏡男」を例に
 19 世紀の末、敦煌莫高窟から発見された敦煌写本『啓顔録』を通して、日本の狂言と中国との関わりについて学ぶ
ppf
13 18 日本の伝統芸能とアジア(二)落語・歌舞伎「牡丹灯籠」を例に
 (明)瞿佑の怪異小説集『剪灯新話』を淵源とする日本の三大怪談の一つ「牡丹灯籠」を例に、中国の物語が、日本
の落語や歌舞伎など古典芸能の演目となった歴史を学ぶ
ppf
14 1/9 伝統芸能を学ぶ意義とは
 戦後、封建思想を鼓吹するものとして禁演の危機にあった歌舞伎を救い、その芸術的価値を米国の人々に伝える架け橋となったフォービアン・バワーズを例に、異文化としての伝統芸能を学ぶ意義について考える
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授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)
 授業に使用したスライドは、教材のページにアップしていく。これを参考に復習を行い、講義への理解を深めてほしい。

テキスト(教科書)
 なし

参考書
・村松一弥『中国の音楽』(勁草書房、 1965 年)

成績評価の方法と基準
 成績評価は次のような基準で行う。
①毎回の授業後に提出するリアクションペーパー(80 %)
②期末レポート(20 %)
 この成績評価の方法をもとに、本授業の到達目標の 60%以上を達成した者を合格とする。

学生の意見等からの気づき
 隔年開講科目のため、昨年度は未開講。