【コラム】東洋文庫と書道博物館 

青木観雪

 このコラムでは、甲骨文字が所蔵されている施設を2つ紹介します。

 一つ目は、東京都文京区にある「東洋文庫」という施設です。東洋学の専門図書館・研究所で、林泰輔が収集していた甲骨文字もこちらの施設に所蔵されています。蔵書数は国宝5点、重要文化財7点を含む約100万冊で、東洋学分野での日本最古・最大の研究図書館であり、世界5大東洋学研究図書館の一つに数えられています。職員は研究員も含め約80名で、2つの超域研究、10の研究班による歴史・文化研究および資料研究を行っています。
 2011年には東洋文庫ミュージアムが開設され、一般の人向けに展示品を公開しています。このミュージアムでは企画展が年中行われており、林泰輔が収集していた甲骨文字は、いつでも見られるものではありませんが、過去に行われた2021年の「東洋文庫名品展」や2019年の「漢字展」という企画展で見ることができました。
 東洋文庫ミュージアムでは、「モリソン書庫」と呼ばれる有名なコレクションがあります。吹き抜けの天井で壁一面に本がぎっしりと収納されており、ハリーポッターの世界に出てきそうな本棚になっています。その美しさから「日本一美しい本棚」とも言われています。当時中華民国総統府顧問を務めていたジョージ・モリソン・アーネストが蒐集していた極東関係文献2万4,000冊がモリソン文庫として、1917年に、三菱財閥三代目総帥の岩崎久彌に譲渡されました。当時岩崎は、東洋学関係の図書の蒐集に興味を示しており、1924年に財団法人東洋文庫を設立しました。

 二つ目は、東京都台東区に位置する「台東区立書道博物館」です。日本の洋画家・書家であった中村不折が収集したコレクションが所蔵されており、青銅器、玉器、鏡鑑など重要文化財12点、重要美術品5点を含む東洋美術史上貴重な文化財が多数あります。殷時代の甲骨文字も所蔵されており、博物館本館の常設展示で見ることができます。
 中村不折はフランスで絵画の勉強をしたこともあり、当初は洋画家として出発した人物でした。しかし、1895年に日清戦争従軍記者として中国へ赴き、『龍門二十品』や『淳化閣帖』などの拓本、漢字成立の解明に寄与しうる考古資料を目にし、それらの学びから不折は独自に大胆で斬新な書風を編み出しました。現在でも、店名や商品のゴロに彼の書が使われており、「新宿中村屋」の看板文字、清酒「真澄」や「日本盛」のラベル、「神州一味噌」、「筆匠平安堂」などは不折が手がけたものです。

 皆さんもぜひ足を運び、甲骨文字から漢字の歴史、日中の交流の歴史を感じ取ってはいかがでしょうか?

▼東洋文庫モリソン書庫
▼台東区立書道博物館

東洋文庫ミュージアム
〒113-0021 東京都文京区本駒込2-28-21
TEL:03-3942-0280(ミュージアム直通:展示および広報関係はこちらへ)
【休館日】
毎週火曜日(ただし、火曜日が祝日の場合は開館し、翌平日が休館)
年末年始、その他、臨時に開館・休館することがあります。
【開館時間】10:00〜17:00(入館は16:30まで)
【入場料】
一般 900円、65歳以上 800円、大学生 700円、高校生 600円、
中学生以下 無料 ※但し、小学生のご利用は中学生以上の要保護者同伴、団体割引 20%(20名以上)

台東区立書道博物館
〒110-0003 台東区根岸2丁目10番4号
TEL:03-3872-2645
【休館日】
月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)
年末年始 12月29日~1月3日、特別整理期間等
【開館時間】午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
【入場料】
一般 500円(300円)
小、中、高校生 250円(150円)
※( )内は、20人以上の団体料金

参考資料

  1. 東洋文庫 http://www.toyo-bunko.or.jp/
  2. 書道博物館  https://www.taitogeibun.net/shodou/

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